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至福のとき

Happy Times / 幸福時光

2002 / 中国
監督
張藝謀 (Zhang Yimou)
出演
趙本山 (Zhao Benshan)
董潔 (Dong Jie)
傳彪 (Fu Biao)
董立范 (Dong Lifan)

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初恋のきた道》《あの子を探して》に続き、本作を併せてチャン・イーモウの“しあわせ三部作”と呼ぶそうな。原作はモー・イエン短編小説だが、主人公の設定も盲目の少女も映画オリジナル。

近代化の進む大連。中年に差し掛かったチャオ(チャオ・ベンシャン)は、働いていた工場をリストラされ無職。太めの女性(ドン・リーファン)とお見合いし、結婚資金に5万元が必要と言われ、工場仲間のフー(フー・ピアオ)に借金を申し込む。フーは金を貸す代わりに、林に放置されたバスを改造し、カップルのための休憩所“至福の間”をやったらどうかと提案。自分を旅館の社長と偽り交際を続けるチャオだったが、盲目の継子ウー・イン(ドン・ジエ)に働き口を世話してくれと押しつけられる。仕方なく彼女に按摩師として働いてもらうことに。ウー・インは稼いだ金で深圳にいる父親を探したいと願っているが――

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主人公のチャオは、出てくるなりホラばっかり吹いている。重ねる嘘が可笑しさを生むコメディ映画は、どのようにバレてオチが付くかが鍵。ところがウー・インは結構早い段階でマッサージ室が胡散臭いと察する。そんな場面を見せておいて、所詮は騙されているのか、紙幣の大きさにした紙切れをチップ代わりに渡され喜ぶウー・イン。

オチは、盲目の少女が数段上手だった。何もかも勘づいていて欺かれ続けていたのだ。そしてそれは至福のときだったと・・・。父に捨てられ、継母から虐められ、人の愛情を受けたことのない少女は、たとえホラでも、自分のためにしてくれたことがどんなに嬉しかったことか。演じるドン・ジエの儚くも可愛らしかったこと。彼女は5万人もの中からオーディションによって決まったのだそうだ。

もう一つの要であるチャオなのだが、彼には共感しかねるところが多かった。根は悪くない。でも何しろ嘘をつく動機が自身の結婚のためという下心にがっかり。最後は純粋にウー・インのために手紙をでっち上げる。この辺の泣かせ方はチャン・イーモウらしいが、僕は「あ、《山の郵便配達》だ」と思ってしまった。

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