山の郵便配達
Postmen in the Mountains / 那山 那人 那狗
- 1999 / 中国
- 監督
- 霍建起 (Huo Jianqi)
- 出演
- 滕汝駿 (Teng Rujun)
- 劉燁 (Liu Ye)
- 趙秀麗 (Zhao Xiuli)
- 龔業珩 (Gong Yehang)
- 陳好 (Chen Hao)
1980年代初頭、中国・湖南省西部。長い間、深い山間を歩いて郵便配達を勤めてきた父(トン・ルゥジュン)は、息子(リウ・イエ)に仕事を引き継ぐことになり、二人で二泊三日の配達の旅に出る。
重い郵便袋を背中に担ぎ、過酷な山道を抜け、いくつもの村を訪ねるうちに、息子は長年父が果たしてきた仕事の偉大さを目の当たりにしていくのだった――
原題は“あの山 あの人 あの犬”。ゆったりとした時の流れ、緑豊かな山並み。美しい映像もさることながら、父親役のトン・ルゥジュンが出色だ。120kmの山道を、もう20年以上もひたすら徒歩で郵便配達をしてきた父。そんな仕事柄、幼い頃から留守がちの父親とうまく交流を持てなかった息子。父子の心の隙間を埋める旅――言ってしまえば、ストーリーはそれだけなのだが、父親の子供への想いは、息子が考えていたよりも遙かに深かった。それがスクリーンからじんわりと伝わる。
音楽(ワン・シャオフォン)も良い。父を背負い川を渡る場面では、齢六十を迎える父親を持つ自分は、何とも言葉にし難い気持ちになった。
息子役の新人リウ・イエも素朴さと逞しさ、爽やかな笑顔が魅力的だ。さらに、“老二”と呼ばれるシェパード犬が良いアクセント。僕は犬が嫌いだが、あんな犬だったら大丈夫かも。老二=次男、第二子という意味だそうで、字幕では“次男坊”と訳してあった。一子政策ならではの皮肉な呼び名なのだ。
そして今日も郵便配達に出掛ける息子。時間は絶えず流れていくけれど、同じことを何十年も繰り返す生活から育まれるものがある。なんか、そういうのもありかなって、見終わった後には元気が出る。
半可通の僕が、訳知り顔で「いい映画でした」なんて言ったところで説得力などないのだが、こういう作品に素直に感動できる自分で良かったと思う。