ペイ・フォワード [可能の王国]
Pay It Forward
- 2000 / アメリカ
- 監督
- Mimi Leder
- 出演
- Kevin Spacey
- Helen Hunt
- Haley Joel Osment
- Jay Mohr
- James Caviezel
- Jon Bon Jovi
- Angie Dickinson
- David Ramsey
- Gary Werntz
キャサリン・ライアン・ハイドの小説を映画化。“Pay it forward(次へ渡せ)”は作者の造語で、してもらった親切を“Pay it back(お返し)”するのではなく、ほかの誰かに善行をしてあげなさいということ。
社会科の授業で出された課題は「世界を変える方法を考え、それを実行しよう」。中学1年のトレバー(ハーレイ・ジョエル・オスメント)が考えたアイデアは“次へ渡せ”。自分が3人に善いことをして、その3人は恩を返すかわりに、別の3人に善いことをしてあげる。そうして善行が次に渡って広がっていけば「クソ」みたいな世界を少しでも変えられるというもの。
発想はとても面白い。ネズミ講?チェーン・メール?の仕組みを有効利用したような感じ。一歩間違えるとあざといが、調理法によっては良い作品になりそうなテーマだ。
だが、この映画が今ひとつなのは、ファンタジーではなくリアリティ路線を中途半端に追ってしまったこと。そんな夢みたいな話は現実には不可能なんだよって部分を必要以上に見せるのだ。けれど僕らは、そんなことはもとより承知で、それでもユートピア的なものを願いながら見ている。なのに物語では“ペイ・フォワード”のムーブメントの広がりなんて感じられない。ジャーナリスト(ジェイ・モアー)が源流を求めていくという構成をもっと巧く絡ませるべきだと思うのだが、ケビン・スペイシーとヘレン・ハントの話に時間を割きすぎ。そしてそれが見事に主題と噛み合っていない。
映画でも原作でも、トレバー少年は唐突に死んでしまう。世界は所詮「クソ」なのかも知れないが、ハッピー・エンドじゃいけなかったのだろうか。エンディングはどう見ても《フィールド・オブ・ドリームス》である。当代きっての演技派が熱演しているにもかかわらず、物足りなさが募るのが残念だ。