tuneful.jp

HOME >

« お揃いの洋服を まずくて有名 »

2006-11-06 (Mon)

死を待つ床から

お客さんの中に、癌で余命3ヶ月と宣告された人がいます。
そのおじさんは、数ヶ月前に奥さんの事でやって来て、僕が応対をして以来、何かと僕を頼って電話を掛けてきたりしていました。それが数週間前、「今度は俺も癌になっちまってさ。手術もできないし、薬も効かないんだとよ」と。

今日、そのおじさんに電話を掛けました。最初は留守電だったのですが、すぐに折り返し掛けてきてくれました。
数ヶ月前とは別人のような弱々しい声で「電話、ありがとうね」と言われ、僕はどう言ったらいいのかとっさに出てこなくて、つい「お元気ですか?」と言ってしまったんです。元気なはずもないのに。

なんかそう思った瞬間、涙が溢れそうになりました。

別に特別親しかったわけじゃありません。仕事でたまたま相手をしたお客さん。
でも、死を待つ床の上からわざわざ僕に電話を掛けてきてくれて、仕事だからした電話を「ありがとう」だなんて。
一応状況は変わって、来週手術をするかどうか相談するって言っていました。そして「もし元気になれたら、君の顔を見に行くよ」と、電話口で穏やかに笑っていました。

きっともう会うことも話すこともないおじさんのことを、忘れないために書いておきます。

« お揃いの洋服を まずくて有名 »

↑ Top
←Back