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不愉快な観客

映画でも芝居でもそうだが、劇場に高いチケット代を払って足を運ぶからには、その世界に没頭したい。ところが同じように没頭したい観客ばかりではなく、中にはそれを妨害してくれる人たちがいる。これまでの経験からこんな客は嫌だなぁと思う例をピックアップしてみた。

1. うるさい

ニューヨークで《オペラ座の怪人》を観た時のこと。僕らの隣にフランス人のカップルが座っていた。どうやら男性のほうは英語ができるようだったが、女性のほうは解らないらしく、上演中ずっとボソボソと解説をしていて、耳障りなことこの上なかった。日本では、あまり芝居慣れしていない中高年がおしゃべりしていることが多い。

それから物音も気になる。とくにビニールの袋をがさごそする音。何を探してるのだろうと思うと、客席内は飲食禁止にもかかわらず、お菓子か何か食べている。身じろぎもするなと言うのではないが、集中している時に現実に引き戻すような大きな音を立てるのは勘弁してほしい。

さらに気になるのが咳払い。痰が絡んでるんだか知らないが、やたら頻繁に咳払いをして、別にあなたが歌う訳じゃないんだから・・・と言いたくなる。冬場に多い。

2. でかい

僕も大きいので他人の事は言えないのだが、座高が高くて妙に姿勢のいい人が前にいると悲劇だ。近頃の劇場はわりと客席に傾斜がついていて、どの席からでも舞台がよく見えるように設計されているが、僕が観た中では、帝劇の1階の後ろ。目の前に当日券のための補助席があって、ちょうど僕の真正面の人がノッポな上にやたら姿勢が良くて、ものすごく困った。チケットは自分のほうが高いはずだし、何だかとても損した気分になった。

縦方向もだが、横にでかいのも困りもの。シートがゆったりした劇場も増えてきているが、欧米の古い劇場や日本でも歌舞伎座などはとても窮屈。ミュージカルの客層はまだまだ女性が多いし、小柄な方がほとんどだが、まれに太った男が横に来られると最悪。肘掛けは占領されるし、変な鼻息とか聞こえてきた日には気が狂いそうになる。

自分がでかいと自覚している人は、周りに気を遣ってほしい。あなたの頭のせいでせっかくのタップのステップが全然見えないのだから。

3. マニア

ひどいのになると、俳優を“様”づけ。「あの時のあの芝居はどうだった」とか、幕間に得意げになって語る人。別にそのことは良いが、その手のタイプで嫌なのは、「今日のこの舞台を盛り上げるために観客として参加してるのよ」みたいなやつ。母親が《キャッツ》を観てみたいと言うので連れて行ったことがあるのだが、たまたま隣がそんなやつ。で、スキンブルシャンクスのシーンになった途端、突如母親の耳元で激しく手拍子をし始めた。その取り憑かれたような手拍子に、母親も「鼓膜が破れるかと思った」と嘆いていた。

素晴らしかったら拍手すればいいし、面白かったら笑えばいい。そうしたいのに我慢する必要もなければ、義務でやらなきゃいけないことでもない。ただ客は自分一人じゃないってことを忘れないで欲しいのだ。大して面白くなくても義務感にとらわれたように大声で笑ったり、どうってことない役者にスタンディング・オベーション。まったく興醒めである。

[2000.1.21]

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