笑の大学
University of Laughs
- 2004 / 日本
- 監督
- 星 護
- 出演
- 役所 広司
- 稲垣 吾郎
- 小松 政夫
- 高橋 昌也
1996年に青山円形劇場で初演された三谷幸喜脚本の舞台劇。と思っていたら、なんとNHK・FMでラジオドラマとして1994年に放送されたのがオリジナルなのだとか。出演は向坂睦男に三宅裕司、椿一に坂東八十助(当時)。舞台版は西村雅彦と近藤芳正が演じた。
昭和15年、浅草。太平洋戦争直前の日本では、大衆娯楽の演劇にも統制がかけられ、劇団「笑の大学」の座付き作家・椿一(稲垣吾郎)は警視庁保安課の取調室で、執筆した台本の検閲を受けなければならない。担当の検閲官は、先月配属になったばかりの向坂睦男(役所広司)だ。心の底から笑ったことがないと言う向坂は、このご時世に喜劇などけしからんと、椿にありとあらゆる手直しを要求する。上演禁止だけは避けたい椿は、無理な注文に応えて台本に直しを入れ、毎日向坂の元に通う。そうして書き直された台本はどんどん話が膨らみ、当初よりも数段面白い喜劇に仕上がっていくのだが――
演じる役者を想定して脚本を書くといわれる三谷幸喜は、映画化に際し一から脚本を書き直したと聞いたが、二人芝居というコンセプトに大幅な変更はなく、台詞のやりとりが中心のドラマだ。作品はタイトルから期待するほど爆笑を呼ぶものではなく、むしろ物を創作する過程の高揚感が見どころ。だから笑いたいと思って見るとハズす。
問題は、メディアの特性を活かしていない点だ。もちろん作り手もそこは一応意識して、カメラが取調室から外に出たりもするのだが、いかんせん中途半端。唯一良いと思わせたのは、向坂が劇場に入っていくシーンのみで、抑圧された時代だからこその笑いの大切さが伝わらず、描き方が物足りない。もっと戦争を前面に出しても良かったのではないか。そうすれば終盤の緊張感へとつながっていったはずだ。
もう一つの問題は稲垣吾郎。彼はテレビ番組のコントなどを見る限り、決して勘の悪い役者ではないと思っていたが、台詞劇で重要な言葉の抑揚がちぐはぐで、間と滑舌も悪い。逆に配役を聞いた時、ちょっと意外と思った役所広司は(西村雅彦のイメージが強かったので)、圧巻だった。映画を見て笑えるとすれば、彼のおかげだろう。