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恋の風景

The Floating Landscape / 戀之風景

2003 / 香港、中国、
日本、フランス
監督
黎妙雪 (Carol Lai)
出演
鄭伊健 (Ekin Cheng)
林嘉欣 (Karena Lam)
劉燁 (Liu Ye)
蘇瑾 (Su Jin)
黃覺 (Huang Jue)

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2003年1月、マン(カリーナ・ラム)は、一枚の絵に描かれた風景を探しに香港から青島にやってきた。それは病死した恋人サム(イーキン・チェン)が幼少期を過ごした青島の風景。
サムの従姉トン(スー・ジン)の家で働きながらその風景を探し始めたマンは、郵便配達をしながら絵本作家を目指しているシャオリエ(リウ・イエ)と知り合う。仕事の傍ら、風景探しを手伝ってくれるシャオリエとの距離が少しずつ縮まっていくが、亡き恋人への想いが薄れるのを恐れて、彼の好意を受け入れることができない。
そして風景を見つけてしまうことは、“現実に引き戻されてサムが消えてしまうことになる”と、マンは新たな一歩を踏み出せずにいた――

この映画は、ヒロインの心情に同調できるかどうかで印象が違う。恋人への喪失感を紛らわすために、彼の日記を書き写し、過去を見つめることで何とか精神を保っている。自殺さえ考え、それもできずにもがく姿は哀れと言うほかない。ただ、僕には所詮その苦しみを想像するしかなく、大部分が共感するには至らなかった。
逆に、ほとんど余地のないマンの心に、懸命に入り込もうとするシャオリエに感情移入。
そんな彼にゆっくりと癒されていくマン。おずおずと始まる恋のときめきが丁寧に描かれていて、それもまた作品の重要な要素になっていた。

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物語はごく淡々と進んでいくが、決して退屈ではない。それに寒々とした青島の風景を、とても美しく撮ってあった。
色彩感覚も抜群で、オープニングから海の青と屋根の赤のコントラストが目を射る。《ターンレフト・ターンライト》の原作者で、台湾の人気絵本作家ジミーのイラストが印象的に用いられていて、マンが壁一面に貼られたシャオリエの絵を見つけるシーンから、ジミーの絵をアニメーション化したエンディングまでが、何とも爽やかな後味を残す。
カリーナ・ラムは内に籠もる感情を表現するのに苦労したと見えるが、語学も堪能のようだし、これからさらに楽しみ。リウ・イエは人の良い青年を演じさせたらピカイチ。

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