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Love Letter

Love Letter

1994 / 日本
監督
岩井 俊二
出演
中山 美穂
豊川 悦司
范 文雀
篠原 勝之
酒井 美紀
柏原 崇
加賀 まり子

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婚約者を山の遭難事故で亡くした渡辺博子(中山美穂)は、彼の実家で見つけた卒業アルバムから、中学時代を過ごした住所を知る。今は国道になってしまったという小樽のその住所に、届くはずのない手紙を送ったところ、なんと博子のもとに返事が届く――

序盤は博子の勘違いから同姓同名の藤井樹(中山美穂)宛に手紙を送ってしまった顛末を描いていく。誤解が解けたところで、亡くなった藤井樹の思い出についての文通が始まるというのが中盤。
さらに終盤、中山演じる博子と樹の物語がそれぞれに展開していく。博子は、婚約者への想いが断ち切れぬまま遭難現場が見える宿に連れられていく。樹は、風邪をこじらせ病院に運ばれる。そこに彼女の父親の死をオーバーラップさせる。

クライマックスはそれぞれに悪くない。博子が「お元気ですかぁー」と叫ぶ姿は胸を打つし、倒れた樹を背負うおじいちゃん(篠原勝之)にもジーンとくる。
ところが、二つの話は結局ラストで接点がないまま終わってしまう。作品がいまいち洗練されていないと感じるのは、ここら辺のまとめ方が甘いからだろう。
演出がいまいちな箇所もある。たとえば「お元気ですかぁー」の後に、「今いっちゃんええとこや」という台詞を秋葉(豊川悦司)に言わせるのだが、これでは熱演している中山美穂がかわいそうである。

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着想は面白いし、瑞々しい感性もしっとりした映像も惹かれる。脚本がもう少し練られていれば言うことないのだが・・・。あと、事の発端が博子が樹と似ていたからというのは、彼女にとっては酷な話で、それはやっぱりちょっとキツい。

中山美穂は髪型もメーキャップも変えずに二役を演じて健闘していたが、時々どうしようもなくダメを出したくなる芝居をすることがある。豊川悦司はこの役に必要な切なさをまるで感じさせないのが痛い。それよりも中学時代の樹たちを演じた二人(酒井美紀、柏原崇)と前述の篠原勝之が良い。新人と本業の俳優以外のほうが光っているのは皮肉だ。

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