イン・アメリカ 三つの小さな願いごと
In America
- 2003 / アイルランド、イギリス
- 監督
- Jim Sheridan
- 出演
- Samantha Morton
- Paddy Considine
- Djimon Hounsou
- Sarah Bolger
- Emma Bolger
祖国アイルランドを離れ、カナダ経由でニューヨークに移住してきたジョニー(パディ・コンシダイン)の一家。妻のサラ(サマンサ・モートン)、娘のクリスティ(サラ・ボルジャー)とアリエル(エマ・ボルジャー)の四人家族だ。だが彼らにはもう一人幼くして亡くなった息子フランキーがいた。その事実を受け止められずに苦しむ夫婦だったが、妻はお腹に新しい命を宿し、なおも気丈に暮らしていた。
ハロウィーンの日、クリスティとアリエルは同じアパートに住むマテオ(ジャイモン・フンスー)という黒人の画家にお菓子をねだりに行く。謎めいたマテオをジョニーは疎ましく思っていたが、マテオは一家に無償の愛を注ぐのだった――
監督ジム・シェリダンの実体験がベースの作品。シェリダン自身がアメリカに移住したのは1980年代初頭だそうだが、映画の時代設定はクリスティの持っているビデオカメラなどから察するにもっと後。でもモチーフとなる映画が1982年公開の《E.T.》だし、その辺はうやむや。
映画の前半は、貧しくとも楽しく生きる移民の一家の様子が描かれる。無邪気な娘たちのおかげで悲壮感はない。
そしてマテオの登場で、後半は一転、“生”と“死”が話の中心となる。息子を亡くした喪失感は両親を苦しめるが、エイズに冒されたマテオの優しさと生まれてきた赤ん坊が、一家に奇跡を起こしてくれるのだ。
ちょっと出来過ぎ~って思うところや感情移入できないところもあるのだが、クリスティの三つの願いは健気で泣かせる。両親たちが早く悲しみから解放されるように願い、そして歌うイーグルスの『ならず者』がジーンと染みる。
母親役のサマンサ・モートンがところどころ演技過剰だなぁと思ったけれど、あとは申し分ない。実際の姉妹である子役たちは大人顔負けの名演。彼女たちは一家を救ったと言うより、映画を救ったのでは? 二人にはホント脱帽。