さらば、わが愛 覇王別姫
Farewell My Concubine / 霸王別姬
- 1993 / 香港
- 監督
- 陳凱歌 (Chen Kaige)
- 出演
- 張國榮 (Leslie Cheung)
- 張豐毅 (Zhang Fengyi)
- 鞏俐 (Gong Li)
- 呂齊 (Lu Qi)
- 英達 (Ying Da)
- 葛優 (Ge You)
- 雷漢 (Lei Han)
中国の近現代史をバックに、京劇「覇王別姫」を演じる二人の役者の波乱の半生を描いた大作。
京劇の女形で人気を博す程蝶衣(レスリー・チャン)は、9歳の時に養成所に身売りされ、辛い修行に耐えてきた。同じ養成所で兄弟のように育った段小樓(チャン・フォンイー)が相手役だ。蝶衣は小樓に恋心を抱いていたが、小樓は遊郭の女郎・菊仙(コン・リー)と結婚する。戦争が終わり、国民党から共産党政権へ、そして文化大革命と激動の時代を生き抜いていく三人の愛憎が渦巻く。さらに11年の時が経ち、小樓と蝶衣は久しぶりに再会。二人は変わらず項羽と虞姫を演じるのだが――
1925年に始まり1977年まで約半世紀。映画は、京劇を取り巻く時代の移り変わりと、三人の数奇な愛の物語の2つの側面を持つ。主人公が女形ということもあり、阿片に溺れていく様など倒錯的な香りが漂う。ところが、チャン・フォンイー演じる相手役が非常に繊細さに乏しい。豪快な人となりとも違う、蝶衣の愛に気づいてもいない鈍さなのだ。幼少時代のエピソードが良く出来ているだけに、興が削がれる場面も。そこに割り込むコン・リーは、レスリー・チャンを前に色っぽさでは負けるものの、地に足の着いた女性を逞しく演じていた。さて、レスリー・チャンなのだが、僕はいまひとつ彼の魅力がわからない。そこがクリアできれば、もっと面白く見られたと思うんだけど。
それにしても戦前から戦後の中国はまさに激動と呼ぶに相応しく、文革で蝶衣たちを民衆が糾弾するシーンなど目を覆いたくなるほど。なぜ同じ中国人同士でこんなことに? チェン・カイコー監督はそんな自国の醜い一面も描く。目を覆うと言えば、京劇の修行の様子もすごい。あれじゃほとんど虐待。華やかな京劇も、あれだけ過酷な鍛錬の賜物なのかと思うと感慨深い。