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小さな中国のお針子

The Little Chinese Seamstress / Balzac et la Petite Tailleuse Chinoise

2002 / フランス
監督
戴思杰 (Dai Sijie)
出演
周迅 (Zhou Xun)
陳坤 (Chen Kun)
劉燁 (Liu Ye)
王双宝 (Wang Shuangbao)
叢志軍 (Cong Zhijun)
王宏偉 (Hong Weiwang)

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1971年、中国・四川省。文化大革命の時代、医者を親に持つルオ・ミン(チュン・コン)とマー・ジェンリン(リウ・イエ)は“知識青年”と見なされ再教育のため鳳凰山に送り込まれた。過酷な労働を強いられる二人だったが、ある日、仕立屋の老人(ツォン・チーチュン)と美しい孫娘(ジョウ・シュン)に出会う。“お針子”と呼ばれる娘は、他の村人同様文盲で、ルオとマーは禁書である西洋文学を読み聞かせる。中でもバルザックを気に入るお針子は次第に開放的な思想を持つようになり、やがてルオと愛し合うようになる。そして妊娠、中絶。お針子は女ひとり村を出て行くのだった――

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原作はダイ・シージエ監督の自伝的小説。下放政策により田舎で送った体験をマーという青年を通して描いている。

時折出てくる屈辱的な作業の数々は結構凄まじいものがあるが、さほどエグい感じはしない。
ところがその穏和な描写が、作品の趣旨をぼやけさせてしまった感がある。
ヒロインのお針子はバルザックを知り、結局はそれがもとで村を去る。教養が、一冊の本との出会いが、人ひとりの人生を一変させる。だが映画のメインテーマはそことも言えない。
(僕的には理解しがたい)マーのお針子への控えめな恋心や三角関係、文化大革命に対する政治的メッセージなど、それぞれの素材は力を持っているのに、最後にそれらを回想して締め括られるため、ノスタルジーの中で全体がボーっと終わってしまう印象なのだ。

モーツァルトの調べが場違いにも美しく響き、映し出される山並みはまさに山水画のよう。ルオとマーが朝鮮映画を村人に話して聞かせるシーンが出色。文化に触れる喜び、ピュアな感動が微笑ましい。

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