藍宇 ～情熱の嵐～
Lan Yu / 藍宇
- 2001 / 香港
- 監督
- 關錦鵬 (Stanley Kwan)
- 出演
- 胡軍 (Hu Jun)
- 劉燁 (Liu Ye)
- 蘇瑾 (Su Jin)
- 李華彤 (Li Huatong)
1988年、天安門事件前の北京。青年実業家のチェン・ハントン（フー・ジュン）は、田舎から出てきたばかりの貧乏学生ラン・ユー（リウ・イエ）を一晩金で買う。それから4ヶ月後、二人は街で偶然再会する。一時の遊びと割り切り付き合うハントンだったが、ラン・ユーは真剣に好意を持っていた。しかし、ハントンは女性と結婚し、彼のもとを去って行った。
数年後、またも空港で再会。ハントンはすでに離婚をし、あらためてお互いを大切に思っていたことに気づき、二人で暮らし始めるのだが――
香港、台湾でヒットした作品。撮影は北京で行われたそうで、同性愛への規制が厳しいと言われる中国でよくぞこんな映画を撮ったなと思うようなダイレクトな性描写など、いささか面食らうシーンがあったりもする。
原作はインターネットに匿名で発表された「北京故事」という小説で、自らもゲイを公表しているスタンリー・クワンが監督している。
男性同士という設定以外、ストーリー自体は取り立てて奇抜なこともないメロドラマではあったが、思いの外引き込まれた。
主人公ハントンはバイ・セクシャルで、それこそ男女見境なしのプレイ・ボーイ。彼の浮ついた言動が発端となって物語は展開していく。だが、要となるのはラン・ユーの純粋でひたむきな愛情だ。どんなに都合良く振り回されても一途にハントンを慕う姿が健気でいじらしい。最初に「お互いを知りすぎて飽きが来たら別れる」と引導を渡されたラン・ユーが「愛しすぎないように気をつけてた」と涙ながらに語る場面は痛く切ない。
リウ・イエの好演が大きい。ハントンに向けるまなざしに、純真でまっすぐな人柄が表れていた。フー・ジュンも主人公の持つ豪放さと繊細さを、確かな演技力で見せた。
10年の歳月をわずか86分で見せるので展開が速く、天安門のシーンなど端折りすぎで少々解りにくいところもあるのだけれど、夾雑物が削ぎ落とされ、二人の気持ちの流れがシンプルに浮き上がってくる。