アントニアの食卓
Antonia's Line / Antonia
- 1995 / オランダ、ベルギー、
イギリス - 監督
- Marleen Gorris
- 出演
- Willeke van Ammelrooy
- Els Dottermans
- Veerle van Overloop
- Mil Seghers
- Jan Decleir
- Esther Vriesendorp
- Carolien Spoor
- Thyrza Ravesteijn
アカデミー外国語映画賞を受賞。“女は強し”と思うと同時に、命の有限を自然に受け入れようと思える作品。
第二次大戦直後のオランダ。アントニア(ヴィレケ・ファン・アメローイ)は娘ダニエル(エルス・ドッターマンス)と生家のある小さな村で暮らし始める。彼女の周りには自然と人が集まり、今日も食卓をみんなで囲んでいる。ダニエルは娘テレーズを産み、成長したテレーズ(フェルーノ・ヴァン・オファーロープ)も娘サラを産む。長い月日の中で、人が生まれ、人が死に、恋をし、楽しみ、悲しい経験もしながら、流れていく時間の中を生きていく。死期が迫ったことを知ったアントニアは、ひ孫のサラにみんなを呼んでくるように言う――
40年近い歳月を1時間40分程度で見せてしまうのだから、かなりサクサクと進んでいく。きわどい描写も多く、殺人や近親相姦のシーンまであるのだが、ことさらエグく見せることはせず、あくまでアントニアの人生の一端なのだ。
映画に登場する女性たちは、決して男性に寄りかかるでもなく、主体的、能動的に男性と関係を持っていく。アントニアは自分に性欲が湧き上がれば男性を受け入れ、同性愛者のダニエルは子供をもうけるためだけに男と寝る。知性の高いテレーズに至っては、ほとんどの男性に満足できず、男から見るとかなりお高くとまった女だ。それが女性讃歌なのかどうかは疑問だが、大地たる逞しい女性像は感じられる。
女性というテーマとは別に、無限の時間の中で繰り返される“生”と“死”という限りある命をあるがままに受け入れる人々の姿が感動的。完成度の高い作品とは思えないが、見終わった後、じんわりと余韻の残る映画だった。