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息子の部屋

The Son's Room / La stanza del figlio

2001 / イタリア
監督
Nanni Moretti
出演
Nanni Moretti
Laura Morante
Jasmine Trinca
Giuseppe Sanfelice

カンヌ映画祭のパルムドールを受賞した話題作。宣伝コピーが「生きているときは、開けてはいけないドアでした。」なんて言うから、ハンカチを何枚も用意して見なきゃいけないかと身構えていたのだが、劇的に涙を誘う作品ではなかった。と言うか、コピーは意味不明。

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精神分析医ジョバンニ(ナンニ・モレッティ)は妻と子供二人で、大した問題もなく幸せに暮らしている。ある朝ジョバンニは、家族をジョギングと映画に誘ったが、急な仕事が入ってしまう。仕事から戻ると、息子アンドレア(ジュゼッペ・サンフェリーチェ)が友人とダイビングをしていて溺死したと知らされる。悲しみに暮れる家族。妻パオラ(ラウラ・モランテ)ともギクシャクし、ジョバンニは仕事が手につかない。そんなある日、息子に宛てた一通の手紙を受け取る――

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映画はアンドレアの死を受け入れらない家族と、いかに乗り越えていくかが描かれる。ありがたいことに、僕はまだ近親者を亡くしたことがないので、喪失感を深く実感することはできない。作品から受ける印象は、何もかもがとても神経質。主人公が精神分析医という設定なので、その患者然り、家族との関係も、ジョバンニの性格もとても神経質に見えて仕方がなかった。「あの日、ジョギングの誘いを反故にしなければ・・・」という自責の念は、親ならば当然だろうと理解はできるが、それゆえにカウンセリングの仕事ができなくなってしまうのは、神経質が過ぎると思ってしまうのだ。

でも、子供を失うというのはそれくらい身を切られることなんだろう。同じような境遇の方なら全然違った感想に違いない。さほど涙を誘わないのはタッチが淡々としているからだが、下手にお涙頂戴の演出より人物の心の動きがリアルだ。タイトルである「息子の部屋」につながるガールフレンドに送った部屋の写真。親にも見せたことのない息子の顔。そんな知らなかった一面を垣間見られて救われるシーンは、しみじみと心に残った。

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