ドライビング Miss デイジー
Driving Miss Daisy
- 1989 / アメリカ
- 監督
- Bruce Beresford
- 出演
- Morgan Freeman
- Jessica Tandy
- Dan Aykroyd
- Patti LuPone
- Esther Rolle
オフ・ブロードウェイでも上演された同名の戯曲を映画化したもので、1989年アカデミー賞で作品賞ほか4部門に輝いた。
1948年、アトランタ。長年勤めた教職を退いた未亡人デイジー(ジェシカ・タンディ)は、ある日車を運転しようとして事故を起こしかける。亡き父の跡を継いで会社の社長となった息子のブーリー(ダン・エイクロイド)は、そんな母の身を案じ、専用の運転手としてホーク(モーガン・フリーマン)を雇うことにした。はじめは彼の運転する車に乗るのを嫌ったデイジーだったが、二人は次第に心通わせていくのだった――
戯曲が初演されたのは1985年だそうだが、この映画から察するに'80年代にあってもなお人種差別は残っていたんだなぁということである。
両者の価値観の違いは明確に打ち出される。気位が高く、財産をひけらかすのを嫌うユダヤ女と、持てる者がなぜ誇示しないのかと首をひねる黒人男。そこには接点はない。そんな二人の25年にわたる歳月が淡々と語られ、時に微笑ましくもあるが、いつの時代でも見えてくるのは黒人への差別の根の深さだ。
少々痴呆気味になったデイジーがホークに“You're my best friend.(お前は一番の友達よ)”と言う。心身共に弱ってきて初めて、20年言えなかったことを口にしたりするのだ。だが使用人は最後まで彼女を“Miss Daisy”と呼ぶ。雪解けはあまりにもゆっくりであり、この戯曲が書かれた当時なお、アメリカにおける人種差別は雪解けの最中だったのだろう。
ジェシカ・タンディこの時80歳とのことだが、実に凛としていてシニカルな役柄にぴったりだった。一方モーガン・フリーマンは当時50代、見事な老け作りだ。ダン・エイクロイドをはじめ登場人物がみな穏やかで、気張らずに見られる小品。
25年間の中で年代がいつなのかテロップが出るわけではないが、台詞の中やメーキャップ、小道具で表現しているので、その辺りも考えながら見ると楽しい。