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ストレイト・ストーリー

The Straight Story

1999 / アメリカ
監督
David Lynch
出演
Richard Farnsworth
Sissy Spacek
Harry Dean Stanton
Anastasia Webb
James Cada
Wiley Harker

1994年にニューヨーク・タイムズに掲載された実話をもとにしたロードムービー。風景が美しい。老役者たちも最高。ラストは圧巻。久々に胸の奥のほうから感動が湧き上がる感覚を味わった。デヴィッド・リンチ作品としてはかなり異色とも言えるが、ただ奇を衒うだけではない監督の力量を思い知らされる。

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アイオワ州ローレンス。73歳のアルヴィン・ストレイト(リチャード・ファーンズワース)は娘のローズ(シシー・スペイセク)と二人暮らし。腰が悪く、杖がなくては歩くこともままならない。ある日、10年来仲違いしていた兄のライル(ハリー・ディーン・スタントン)が脳卒中で倒れたと知らされ、兄が住むウィスコンシン州マウント・ザイオンまで会いに行こうと決意をする。だが、目が悪く車が運転できないアルヴィンは、時速わずか8キロで走る小さなトラクターで遙か350マイルの旅に出るのだった――

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主人公は老人。出てくる人たちも年寄りばかり。アルヴィンは何をやるにも危なっかしく、トラクターは途方に暮れるほどノロい。映画はそれに合わせてゆっくりゆっくり進む。退屈?僕はちっともそんなことはなかった。頑固ジイさんは、見てるこっちが「もっと人に甘えちゃってよ」と思うほど意地っ張りで、6週間掛かってでも自力で行くことにこだわる。また、彼や娘ローズを取り巻くエピソードはツラいものがあるが、悲しみだけに浸ってはいない強さがある。それは積み重ねてきた経験が強くさせたのだ。家族や兄弟に対するアルヴィンの台詞も、正論過ぎて気恥ずかしいくらいだが、年輪から出る言葉は素直に聞かずにはいられない。

「年とって最悪なのは何?」と聞かれ「若い頃を覚えていることだ」と答える場面。でもこの台詞は絶対に額面どおりの意味じゃない。兄との楽しい思い出があるからこその旅なのだから。忘れがたい素敵な過去があって、今がある。僕はそう思う。

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