運動靴と赤い金魚
Children of Heaven / بچه هاي آسمان
- 1997 / イラン
- 監督
- مجيد مجيدي (Majid Majidi)
- 出演
- ميرفرخ هاشميان (Mir Farrokh Hashemian)
- بهاره صديقي (Bahare Seddiqi)
- محمدرضا ناجي (Amir Naji)
英題は原題を直訳してあるそうだ。イラン映画は初めてだったが、文化の違いに驚く。イスラム教の国なので女の子はヘジャブ（髪を覆うスカーフ）を着用し、男女別学。どうやら通学の時間帯も男女で異なるようだ。学校の先生はとても厳しいし、生徒が口をきく時は右手の人差し指を掲げて話す。
そして何より貧富の差が激しい。
主人公アリ（ミル＝ファロク・ハシェミアン）は、そんなイランでも極貧家庭の子供。修理に出した妹ザーラ（バハレ・セッデキ）の靴を失くしてしまい、両親に打ち明けることができずに、アリの運動靴を妹と交互に履くことにする。ブカブカで汚い靴を恥ずかしく思うザーラ。
ある日、自分の靴を別の女の子が履いているのを発見して、その子の家まで跡をつけるが、家の中から出てきたのは盲目の父親。自分たちより慎ましく暮らすのを見て、黙って立ち去る兄妹。なんと心優しいことか。
そんな折、小学校のマラソン大会が開かれ、3位になると賞品が運動靴。アリはザーラのために絶対に3位になると誓うのだった――
アリは貧しいながらも、とても健気で成績も良い。父親（アミル・ナージ）が庭師の仕事を取ろうと、中流家庭の玄関先でしどろもどろになっても、機転を利かしてアリが説明したりして頼もしい。
とは言うものの、そんな父親でも家では相当厳しいのだろう。靴を失くして怒られるのがよほど怖いらしく、妹を巻き込んで隠し通す姿が可愛らしい。
アリ役の男の子は実際に貧しい家庭の子らしく、メソメソ泣く姿を気に入られ出演が決まったのだとか。たしかに彼の泣き顔を見ると、切なくて困っちゃう。
妹のザーラはさらに健気で、親に言い付ければ済むものをお兄ちゃんのために黙っててあげるのだ。これが兄妹愛というものだろうか。ペン1本に喜ぶ姿にホロリとしてしまった。
貧困ゆえに心が荒んでしまうことも多い世の中で、貧しくとも心の気貴さを失わない兄妹に感動。